腎臓病と運動
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慢性腎臓病の方は運動して良いの?
最近では慢性腎臓病の方が運動療法を行うと腎臓の働きが改善され、透析療法を遅らせることができると言われています。
そのため、慢性腎臓病の方が日常生活に運動を取り入れることが推奨されています。
以前までは、安静にしていることが望ましいとされていましたが、慢性腎臓病と運動療法による研究の有効性が認められるようになりました。
なぜなら、腎臓疾患の方が運動を行うと、腎臓の糸球体から体内へ繋がる血管を広げる働きがあるため、糸球体の圧力を軽くしてくれます。
そのことによって、腎臓からたんぱく質が漏れ出すのを抑えて腎機能の悪化を防ぐことができるからです。
また、腎臓疾患の方が運動不足になると、筋肉量の低下から日常生活で行動範囲が制限されてしまったり、うつやイライラなどのストレス症状も抱え込みやすいと言われています。
たとえ腎臓病をお持ちの方であっても、身体を動かすことで生活の質も上がり、社会生活も問題なく送ることができるのです。
このように、運動することは長期的に見ても腎機能改善効果のメリットが大きく、気分をリフレッシュしたり、精神面を安定させる効果もあります。
慢性腎臓病の方の運動するメリット
合併症の予防
腎臓疾患の方は運動することで脳卒中や心筋梗塞などの合併症を防ぐことにつながります。
その理由は、慢性腎臓病は高血圧や糖尿病などの生活習慣病が原因となって脳血管疾患を発症しやすくなるからです。
そのため、適度な運動を取り入れることで血流が改善し、血管が強くなり動脈硬化を予防します。そして結果的に心疾患などの発症を防ぐ働きがあります。
しかし、運動療法だけでなく腎臓病食の食事療法も併用することでさらに合併症予防効果が期待できます。
死亡率の低下
慢性腎臓病患者の運動習慣の有無と予後についての研究結果では、運動習慣のある人は死亡率が低く、さらに血液透析の導入が遅くなることが分かっています。
慢性腎臓病の最大の死亡原因が心血管疾患であり、腎機能が低下するほど、発症リスクが上昇する傾向にあります。
したがって、心血管疾患を未然に防ぐことが死亡率を低下し、寿命の延伸に繋がります。
体力や生活の質の向上
腎臓疾患の方が運動を行うことで、筋肉量が増えて運動能力が高まります。
そして、生活動作がスムーズに行えるようになったり、転倒予防にもなります。
また、加齢に伴う虚弱や要介護状態などを減少させ、人生を楽しめるようになります。
そして、仕事や社会生活などにも積極的に参加することが可能になり、生きがいや精神的にもゆとりがある暮らしができるようになるのではないでしょうか。
運動する際に注意する事
原則禁止されている場合
心臓病などの持病を持ち、病状が不安定な方、高度肥満症、収縮期血圧が180mmHg以上、空腹時血糖値が250mg/dL以上に該当される方。
とくに、短期間に強度の高いトレーニングをすると尿蛋白の排出量が増えたり、腎機能に悪影響を及ぼす場合がありますので、かかりつけ医に相談しながら運動療法を進めていきましょう。
運動中の一般的な注意点
睡眠が十分にとれていない場合や具合が悪くなってしまった時は休憩しましょう。
また、食事療法で水分制限をされていない方はしっかり水分補給し、熱中症などにも注意しましょう。
もし、運動中に息苦しさ、だるさ、吐き気、全身のむくみなどが現れた場合は尿毒症の症状が考えられますので、直ちに運動を止めて医師の指示にしたがいましょう。
糖尿病をお持ちの方は、低血糖に注意する必要があります。酷くなると昏睡状態や意識のない危険な状態に陥ります。
そのため、運動前にブドウ糖を補給したり、運動中に低血糖症状を起こした時に備えてブドウ糖などを用意しておきましょう。
どんな運動をすれば良い?
運動には、有酸素運動やレジスタンス運動の2種類があります。
有酸素運動は、ウォーキングやジョギング、水泳などがあり、酸素を取り込みながらエネルギー消費を行う運動です。
一方、レジスタンス運動はいわゆる筋力トレーニングです。ダンベルや自分自身の体重などで圧力をかけて筋肉を増やし、基礎代謝量を高める働きがあります。
有酸素運動
下半身など大きい筋肉を使ってテンポよく動かしましょう。
とくに腎臓疾患の方は、ジョギングや歩行速度が速すぎてしまうと強度が高くなってしまいますので注意しましょう。
運動の目安は週に3〜5日程度に、強度は日常の歩行速度よりもやや早めを意識できると良いでしょう。
時間は1日に20〜60分を目安にしましょう。
レジスタンス運動
踏み台昇降
足全体の筋力をアップします。
やり方は、20cm前後の踏み台を用意し、ゆっくり上り下りをする。慣れてきたら踏み台の高さを少しずつ上げて微調整してみましょう。
かかと上げ
ふくらはぎやお尻の筋肉を鍛えます。
やり方は、椅子などの背につかまり、足は肩幅に広げてつま先立ちになり、ゆっくり踵を上げ、5秒カウントして静止します。そしたら踵をゆっくり下げることを繰り返し行います。
椅子スクワット
太ももやお尻の筋肉を鍛えることができます。
やり方は足を開き、椅子にゆっくり座り、ゆっくり立つことを繰り返します。目線は正面に合わせ、股関節を開いて膝を傷めないようにしましょう。
慢性腎臓病の病期に合わせた運動とは?
ステージ1と2では蛋白尿の数値が高くなければ健常者と同じように運動することが可能です。
ステージ3では高血圧や糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方は、かかりつけ医に病状を伝えて相談の上、運動を行いましょう。
ステージ4と5では強度の高い運動は腎臓に悪影響を及ぼすことがあります。
しかし、運動不足は虚弱や低栄養などを引き起こすリスクもありますので、自己判断せずにかかりつけ医の指示を仰ぎましょう。